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by tsukushi--juku
土筆塾主宰・土屋春雄のブログ

親子で共感できる体験を
 楽しい標本作り
                     3年 s.y

 ぼくは一年生のころからお父さんと一緒に標本作りを始めた。
 まず、つかまえた虫をかっていて、しんでしまったらかんそうさせる。かんそうさせた虫は体がカチッカチッに固まる。だから、熱いおゆにひたしてやわらかくする。やわらかくした虫の足や触角を整えて、ケースや箱の中に置く。そして体の中心あたりに虫ピンをさす。
 ぼくは、虫の近くに「この虫はOOOO」や、いつつかまえたか、どこでつかまえたか、などを書いた名札を置く。後、かんそう剤や小さな虫がつかないように、虫よけ剤を置く。これでぼくの標本が完成する。
 ぼくは将来、外国にいる珍しい虫を標本にしたい。
 標本作りは楽しいから、またお父さんと標本を作りたいと思う。

  子育てには、忙しい中にも子どもと共感し合う手間ひまが必要だ。

もう20年以上前になる。「私は親子で共感できる体験を」という文章を書いた。(『心を育み心をつむぐ』)y君の作文を読みながら、その文章を思い出した。

 親子で共感できる体験を

二週間ほど前になる。五年生のFちゃんがお父さんといっしょに立ち寄ってくれた。日曜日だった。親子で散歩だという。「米軍通信所周辺の原っぱでバッタを捕まえながら平林寺まで行こうかと思って」という。私も途中まで同行させてもらった。親子のせっかくの交流を妨げないように、少し離れたところから親子を見守ることにした。二人は原っぱでバッタを求めて歩きまわっている。
(ああ、いいな、いい風景だ)と私は思った。
親子が共同体験をもちながら、喜びや残念さを共感し合うことは、子どもの成長にとってとても大切なことだ。私たちは、金や物や便利さにとりまかれて生活していることから、子育てまでそれらを子どもに与えることで済まそうとする。多額の金を持たせ、次々と高価な遊具を買い与える。旅行に行く、遊園地に行く、デパートやレストランに連れていく…。もちろんそれは一つの大事な体験ではある。時にはそうしたことも必要だ。だが、子育てを、金や物や便利さを与えるだけで済まそうとする傾向はないだろうか。金や物や便利さ「与えられるもの」だけで肩代わりさせているようなことはないだろうか。
Fちゃん親子のように、散歩に出てバッタを追いかけまわすような身近な体験の中で、共感し合うような「手づくり」の子育てこそが今、大切なのではないだろうか。子育てには、忙しい中にもそうした手間ひまが必要なのだと私は思っている。(『心を育み心をつむぐ』より再録)
by tsukushi--juku | 2014-06-14 10:23