土筆塾主宰・土屋春雄のブログ

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いじめ問題に触れて
 夏休みの間は通信を渡すことができないから、「土筆通信」もお休み、ということにしているが「黙っていることができない」問題が多すぎる。政治上のことは控えることにするが、最近目につく「いじめ」にかかわることには少しふれておきたい。

「いじめ」問題を巡って

 最近「いじめ」を巡る問題が新聞紙上で目につく。8月9日朝日新聞だけでも「同級生に傷害容疑。広島中3逮捕、いじめか」「小6傷害容疑、高2男子も逮捕」「『根性焼き』したとされる生徒 高校、先月に自主退学処分」(仙台)「いじめでけが、中2が被害届」と言った記事が並んでいる。しかも「いじめでけが…」の記事は清瀬市内の中学で起きたもので朝日新聞の報道によれば「昨年の春ごろから弁当をゴミ箱に捨てられたり、教室でズボンを下げられたりするいじめを受け、今年1月25日には、廊下で他の生徒とケンカするよう強要され、馬乗りで頭を床に打ち付けられるなどして肋骨を折った。…」ということのようだ。
 いじめが子どもの自殺という最悪の事態をもたらした事件も、何件も報道された。
 もう16年以上も前になるだろうか、「いじめ」が全国あちこちで大きな問題になり、新聞紙上を駆け巡ったことがあった。清瀬の小中学校でも例外なく、「いじめ」が大きな話題になった。そのころ私は「学校は子どもたちが一日の大半を過ごすところだ。それだけに、学力の習得はもちろん、よかれ悪しかれ学校が子どもたちに与える影響は極めて大きい。学校の日常の中で、子どもたちがどんな体験をし、何を感じ、何を考えて日々を送っているのだろうか。子どもたちの作文を通してその一端を紹介してみたい。」と書き「いじめ」に関する幾つかの作文を紹介したことがあった。再録ということになるが、改めて紹介してみたい。
     省略
 いじめ問題についてどう取り組むか、対処療法については個々のいじめの情報があるわけではないから、意見を差し控えるが、いじめ問題がクローズアップされるたびに少しも変わらない教育行政や学校の体質、取り組み、教師と子どもの関係などについてはたとえ「そんなことは理想で、現実とかけ離れている」と言われても、やはり触れておきたい。これもかつて私が「教育についての私見」として書いたものだが抜粋して再録しておきたい。(小冊子『普段着の子どもたち』2008年発行)より

教育は人間対人間の関係だ

 かつて私は『子を思う』の中でこう書いた。
 「教育は、人間が人間を教え育む営みだ。教師と言う人間がこれから成長していく子どもに、知識を教えたり、知的、文化的、あるいは人間的刺激を与えたりしながら、子どもの心に働きかけ、子どものうちにある力を引き出し、子どもが自分の力で学び成長していけるように援助し続ける営みだ。
 そしてそうである以上、教師と子供たちの間には、何よりも心のふれあいがあり、温もりがなければならないし、信頼関係が土台になければならない。権威や権力で子どもを管理したり、規則を張りめぐらしてそれに従わせたり暴力・体罰で脅したりすることを教育・指導などと思い込んではならない。・・・教師は、自分の全人格人間性をかけて子どもと向き合い、その教育的力量や人間的魅力、価値観や人生観を通して、子どもの成長を援助できるようでありたい。」
 土筆通信900号に掲載した『土筆通信NO1』の中で私の教師時代の同僚も『教育の本来のあり方は、人間と人間のふれあいの中で、生きることの様々な意味や方法を身につけていくことなのだ』と書いているが同感だ。
 教師の目は何よりも常に子どもにむけられていなければならない。その子がどのような環境の下でどのような成長をしてきたのか、またしているのか。その子の特性は何か。興味や関心は何か。そうしたことを可能な限り知り、その子に今どんな援助をしてやることが必要なのかに精一杯心を配らなければならない。教師がそうした態度で子どもに接するなら、時には時間のかかることはあっても、子どもは必ず応えてくるものだ。
 子供の成長を真剣に考え取り組もうとするとき、時にはその子の親に意見を言わなければならないときもある。ぶつかるときがあるかもしれない。そうならないためには親に対して、教師の側からの意見をできる限り送り続けることも必要だ。
 教師は教室の中だけで子どもを見てはならない。また、勉強ができる、できないという側面からだけで子どもを見てはならない。子どもには子どもの一人一人異なった成育過程があり家庭環境があり、子どもを取り巻く情報社会や地域社会がある。子どもはそうした中で様々な影響を受けながら成長している。だからこそ『単眼』で子どもを見るのではなく『複眼』で子どもを見る目を、教師は持たなければならない。一人一人の子どもの成長を、心を込めて援助する。そうした上に成り立つふれあいと信頼関係。これは教育に携わる人間のもっとも大切な資質だ。

    子ども同士の温かい人間関係を育てることも大事な任務
 
子どもの成長には、子ども同士の関係が極めて大切だ。いわゆるクラス集団をどう構築するかと言うこともそのひとつだ。これには教師の姿勢が大きな意味を持つ。子どもと教師の信頼関係がなければクラスの人間関係はうまくいかない。クラスがうまくまとまらず、子ども同士の関係がうまく成立しなければ、学習活動もうまくいかないし、いじめや暴力沙汰、あるいはクラスの『荒れ』現象が様々な形で現れる。教育現場の現状がどうなっているか私は十分に掌握していないし、ここであれこれ述べるつもりもない。ただ、いじめや不登校の原因のかなりの部分が友達関係の中にあることは間違いないだろう。
個人と集団の問題は決して簡単ではない。それぞれの家庭環境も、それぞれの知的文化的環境も、それぞれの個性も異なるのだから難しいのは当然だ。だが子どもたちはクラスと言う共通な舞台に立っているのだ。
かつて私が教師だったころ、もう、45年ほども前になるが、クラス集団をいかに作るかと言う問題が全国あちこちで追求され、優れた実践例が本として出版されたことがあったが、(『学級革命』や『かえるの学校』など、思い出す)時代は変わったとは言え、できないことではない。

      教師の教育的力量をいかに高めるか

教育的力量と言うのは教科書をいかにうまく教えるかだけではない。それぞれの教科について語る資格はないが、国語に関して言えば教科書だけがすべてではない。今子どもたちの成長にとって何をどう与えることが大切か。そういう立場に立って教材を探し、選び、子どもたちに伝えなければならない。子どもの心を揺り動かすような授業は教材の持つ力に頼ると言う面があることは確かだ。また子どもが生きている現実に学ぶという点では、新聞記事を取り上げたり、いろいろな文化人や評論家、専門家の文章を使ったり、教材を幅広く求め、子どもの視野を広げていくよう働きかけることも必要だ。もちろん教材を子どもに提供する場合、それを一方的に伝達するということであってはならない。子どもが理解できるように伝える、教育技術は大切だ。また子供が自分の意見を表明できる機会も保障しなければならない。
これらすべてをさして教育的力量と考えていい。
 
      教育行政の任務はこれらすべての教師の活動を保障すること

最近中山文部科学相は中央教育審議会の総会で、いわゆる『ゆとり教育』を柱にした、学習指導要領を見直すよう求めた。私はゆとり教育に反対ではない。「ゆとり教育」が学力低下につながったことは確かだが、それは学習指導要領が進めた「ゆとり教育」が土曜日を休みにするとか教える内容を減らすとか、間違った方向で進められたからにほかならない。自から学び考える力を養うために学校、教師が創意工夫をこらすことが悪いわけはない。問題なのは教師に創意工夫をこらす自由も時間も保障せず、「文科省が学校と教師を縛り付けてきたのが現実」(朝日新聞)。授業時間も内容も事細かに決められ上意下達の『指導』や、『報告』やと指示待ちや横並びをはびこらせ、教師の意欲を摘み取り、極度な管理体制の下、教師同士の交流や共同の研究の機会をつぶしてきた。そこにこそ、現在の問題の根源がある。
 文科省を通して権力が教育を自らの掲げる政治目標の道具として動かすようになれば、それは戦前の教育の二の舞であり、日本と子どもたちの将来をだいなしにすることにつながる。一つ一つ取り上げるつもりはないが、憲法改正の動きと連動した教育基本法の改正の動きはその危険な一例である。
 国がやらなければならないことは、教師が十分に子どもたちを掌握できる1クラスの定員を減らすとか、上意下達の『指導』や『指示』で縛り付けるなどの管理主義体制をのぞくとか、君が代指導に見られるような教育内容への干渉などをやめることである。
また、教師と、教育現場にゆとりと自由を保障し教師が子どもと十分に向き合い、のびのびと活動できる場を保障することである。

    教師は子どもたちの未来を担っている

 教育現場の状況は厳しい。教育はきわめて危険な方向に向かおうとしている。政治が、教育行政が、そうであればあるほど教師の任務は大きい。子どもたちの将来を担っているのだからどんなに厳しくても逃げるわけには行かない。一人の人間として、また、子どもの未来に責任を持つ教師として、教師の自由と権利を守る教師集団を作ること、親とつながり地域の教育力とつながり、たくさんの心ある人たちとつながることなど、困難だけれど誇りある道を歩いていってもらいたい。

 具体的な事例もなく一般的な意見になったが、私の基本的な姿勢として書きとめておきたい。
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by tsukushi--juku | 2012-08-11 21:31 | Comments(0)