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by tsukushi--juku
土筆塾主宰・土屋春雄のブログ

憲法記念日
  憲法記念日に寄せて

ここに「あたらしい憲法のはなし」という小冊子がある。昭和22年新憲法制定後、文部省が発行し、中学一年生だった私たちが学んだ「教科書」だ。(手元にあるのはその復刻版)その中の戦争の放棄という部分を抜粋して書きとめておく。
……こんな戦争をして(*太平洋戦争)日本の国はどんな利益があったでしょうか。何もありません。ただ、おそろしい、悲しいことが、たくさん起こっただけではありませんか戦争は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だからこんどの戦争をしかけた国には、大きな責任があるといわなければなりません。……
そこでこんどの憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機もおよそ戦争をするためのものはいっさいもたないということです。これからさき二本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんはけっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しい事を、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
もう一つは、よその国と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって,相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをしてきまりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの国をほろぼすようなはめに鳴るからです。また、戦争とまで行かずとも、国の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。これを戦争放棄というのです。そうしてよその国となかよくして、世界中の国が、よい友だち鳴ってくれるようにすれば、日本の国は、さかえてゆけるのです。
みなさん、あのおそろしい戦争が、二度と起こらないように、また戦争を二度とおこさないようにいたしましょう。
この憲法は、現在の私たちの生活のすべての基となっている「日本国憲法」だ。まだ一字一句変えられていない。ところが現実には、戦後、時の権力によってなし崩しに、勝手な解釈のもとに次々と改悪され、今また、憲法と逆な事態が進行しつつある。
私も土筆通信や小冊子を通して、何回となく日本が逆コースを突き進んでいることに警告を発してきた。小冊子『私の少年期と青春の断面,そして家族のこと』のあとがきで私はこう書いた。『日本の政治はどうしょうもないほど腐って、しかも「戦争する国」「に向かって大きく舵を切ろうとしている。このまま黙っているわけにはいかない」と。
憲法の九条、「戦争放棄」に限ってみても、権力は常に「仮想敵国」を作り上げ、それを口実に軍備増強をはかり、今や自衛隊は世界有数の軍事力を保有するまでに拡大強化された。
4月30日民主党政権下初の、アメリカ訪問中の野田首相は、オバマ大統領と会談「日米共同声明」が発表された。新聞報道の「動的防衛協力」という言葉を目にしたとき、私は反射的に「ここまで来たか」と声を発した。地域と世界の平和と繁栄のため「あらゆる能力を駆使し、我々の役割と責任を果たす」言葉はもっともらしいが、要は地球規模で日米同盟を強化するという宣言だ。朝日新聞は、「日米安保条約体制が、アジアの安定装置へと変貌する節目」と書き「野田政権は昨年の『武器3原則』の緩和と同様にまたも、なし崩し的な手順」で日本列島の防衛の枠組みを超え、未踏の領域に歩みだしたと警告している。(アメリカ総局長辰野純二)
「動的防衛協力」とは米軍と自衛隊が、海外で共同した軍事行動を行う、つまり、肩を並べて武力行使する、を言うことだ。そのために、北マリアナ諸島や、グアムで共同使用する訓練場の建設などを明記した米軍再編見直し計画に対しても、「防衛協力のさらなる強化を目指す」と同調する。(訓練場の建設の費用負担も含まれているようだ)野田政権が推し進めようとしているこの方向が、「集団的自衛権」を禁じた日本国憲法に真っ向から逆らう、極めて危険な侵略的変質であることは明らかだ。日本を軍事大国につき進めてきたとき、常にもち出されたのは「仮想敵国」の存在だった。今回もまた中国の軍拡だ、北朝鮮のミサイルだと、その危険性を声高に叫び、外交努力による解決を放棄するかのような軍拡、日米軍事協力強化に突き進んでいく。野田政権が目指す方向は「地域と世界の平和と繁栄のため」どころか、世界的にも時代遅れとなりつつある、世界に緊張と危険を作り出す道以外の何ものでもない。
野田政権が進む方向は、沖縄の基地問題を含めて、日本国民が求めていることとは逆だ。日米軍事同盟にしがみつく限り、行く先は国民との矛盾をさらに深めることになるだろう。
日米安保条約が、日本をアメリカのいいなりに縛り付けている一番の根っこだといってもいい。かつて1960年代、安保条約を巡ってたたかわれた、日本中を巻き込んだ運動は、現在の事態を予想したものだったと言えなくもない。
原発、TPP(環太平洋連携協定)、そして、基地問題を含む日米軍事同盟、アメリカべったりのこの政権の在り方を憲法記念日に、改めて考えてみたい。
by tsukushi--juku | 2012-05-03 08:39